2012年11月13日火曜日

Mon.Nov.12,2012 コーチングのコツ(tips)-2 視野を広げる

 初級から中級のレベルに選手たちのレベルを上げるには、「状況判断力」が欠かせない。そのためには、周囲を見なければならない。視野を広げることが前提となる。初級レベルで停滞しているチームの選手に共通しているのは、ゲーム中、ボールしか見ていないこと。
 例えば、スパイクレシーブ(dig)の場合、うまくできない選手を観察していると、選手の眼はボールしか見ていないことに気付く。そこで、私は、その選手に質問する。

「ボールは、意思を持っていますか?」
「?・・・ボールには意思はないと思います。ボールの中には空気がありますが・・・」
「That's right!そうですよね。ボールは意思を持たない。ボールを扱うスパイカーが意思を持って、どこに打とうか考えているんですね」
「そうか・・・スパイカーを見れば、どのタイミングでどこに打とうとしているのか、わかるのですね」
「君、なかなか鋭いね。そういうことなんだよ。ところで、ボールを打つ瞬間まで見ているよね?」
「・・・いやあ・・・そこまでは見ていないです」
「セッターから上がるトスボールの放物線を見る。次に、スパイカーの助走方向を見る。味方のブロッカーの位置を見る。レシーバー(digger)は最適なレシーブ位置に速やかに移動する。空中でのスパイカーの身体の方向、腕のスイング、ボールと触れている手の方向を見て最終のレシーブ位置を微調整(adjust)する」
「コーチ!なんか、イメージしていたら正面でボールをレシーブして簡単に上がっちゃいました!」
「よし、では、そのための基本練習をやろう」

(拙著の「確実に上達するソフトバレーボール」から)
ということで、空中を移動しているボールからいったん眼を離してから、プレーヤーをチラッと確認視する基本練習を紹介しよう。2人1組を作って、1人はネット際でボールを持って立つ。もう1人はエンドラインから2mコート内に入って軽く膝を曲げてパスの構えを作る。ネット際のプレーヤーが両手でエンドライン際のプレーヤーにボールをアンダー・スローイングする。スローイングしたらすぐさま片手でじゃんけんのグーかパーを出す。ボールを受けるプレーヤーは、投げられたボールの放物線から落下地点を見極めて移動を開始しながら投げた人の手の形を見る。手の形がグーだったら、大きな声で「グー!」と叫んでボールに眼を転じてアンダーハンドパスを行う。パーであれば「パー」と叫んでオーバーハンドを行う。これらにチョキという条件をつければ更に状況判断能力は向上する。例えば、チョキは、平行パスにするのはいかがであろうか。
  もう少し複雑にするのであれば、ネット際のプレーヤーはボールを投げたらすぐさま両手を用いて1人じゃんけんを顔の前でやる。勝ったほうの手の形(シグナル)を判断してパスを行う。脳の活性化には良いね。顔の前に両手を上げているバージョンでは、この他に、指を出して足し算や掛け算を行わせて、奇数であればアンダーハンドパス、偶数であればオーバーというのも楽しいですよ。両手の間隔を離したり、ネット際の人数を2人にして、間隔を離した2人からシグナルを出し、奇数だったら左側の人に、偶数だったら右側の人にパスを出すのも難しいですが楽しいですね。そして、このような視野を広げる楽しい練習が「状況判断能力」を向上させ、結果としてボール・コントロール能力が高まるということです。

 そうそう、最初に述べた「微調整」ですが、女子選手の方達には「美調整」とホワイトボードに大書きします。女性は「美」には「美ンカン」・・・もとい、「敏感」です。レシーブ能力が一気に向上しますよ。実は、これが女性指導のコツなんです。幼稚園児から来年に白寿を迎えようとしている私の義母まで「美」を追求する「女」なんです。そんな女心を解らない男性指導者はいくら理論が最先端でも女性プレーヤーには受けいられないでしょうね。