「しかし、他の人の成功事例をマネすることが、必ずしも自分の成功を約束するのものではなくなったのが、今の時代です。昨日までの成功は、今日の成功を意味しません。そのような時代に大切なのは、やはり創造力です。そして創造力とは新しいものをつくりだす力を意味している以上、失敗を避けて培えるものではありません。
創造力を身につける上でまず第一に必要なのは、決められた課題に解を出すことではなく、自分で課題を設定する能力です。与えられた課題の答えのみを最短の道のりで出していく、いまの日本人が慣れ親しんでいる学習法では、少なくともいまの時代に求められている真の創造力を身につけることはできません」(『失敗学のすすめ』畑中洋太郎著、講談社文庫、プロローグより)。
10年ほど前に「失敗学」学会が設立されるとの記事が新聞に小さく載った。面白そうだなと、畑中先生の著書を読んで、合点した。人は、成功からだけでなく失敗からも多くのことを学べる。否、成功よりも失敗からの方がより多くのことを学べるのではなかろうか。しかし、人は失敗をなるべく避けようとして成功事例から効率的に学ぼうとする。
政府が、福島第一原発の事故調査・検証委員会を作る。委員長が東京大学名誉教授の畑中洋太郎先生だ。畑中先生が提唱する「失敗学」では、失敗の経緯を明らかにすることで大事故を防ごうという立場を取る。最近になって、「原子力村」が隠蔽していた事実が次々と明るみに出てきた。全ての事実を明るみに出して、次の世代に大事故を起こさせない防止策を立てていただきたい。
「・・・失敗は誰にとっても嫌なものだが、人間の活動につきもので人が生きている限り避けて通れない。そうであるなら大切なのは失敗しないことではなく、失敗に正しく向き合って次に生かすことである。これが失敗学の基本的な考え方である」(『失敗学のすすめ』同上、文庫版あとがきより)。
(画像は、文庫版のカバー。2005年に出版されて5年間で17刷のロングセラーになっている。一読をお勧めする)
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