ナショナルチーム・メンバー候補選手選考会を兼ねた国内4強クラブによるリーグ戦が始まった。本日と明日は午後2時から2試合、最終日の日曜日は早朝7時30分から2試合行われる。会場は、プノンペン市中心部にあるオリンピックスタジアム内の屋内体育館。
カンボジアで木の床の体育館があるのは、私の知り限りここだけだ。大会には、飲料メーカーなど4社がスポンサーに付き、賞金が付いている。参加チームのうち3チームが警察クラブチームで1チームが地方公務員クラブチーム。4チームとも、バレーボールの練習と試合をやることで収入を得ているプロである。
1チームを除き、3チームとは視察などで面識があり、久しぶりの再会でチームのスタッフと言葉を交わす機会が多くあった。
私が普段指導のお手伝いをしているプノンペン警察チームは、第2試合で、昨年優勝している地方の警察チームに0-3で敗退した。公式試合に立ち会ったのは2度目であったが、色々情報収集できた。
0-3で敗退した原因は、ゲームを観戦してすぐに分かった。
監督の椅子に座っているのは、普段はほとんど練習に出てこない前監督であった。普段練習を指導しているのは昨年までコーチで、今年から新監督に就任した人間である。
「なぜ、前監督の彼はベンチに座っているのか?」私は関係者に尋ねた。
「渡邉先生が指導してチームが強くなってきたので、前監督は座りたくなったのでしょう。彼は、新監督の上司ですから・・・」
前監督の采配を見ていると、具体的な戦術の指示は出ていないようだ。私であれば、次のような指示を図示して簡潔に出していた。
①サービスは攻撃である。1セットで5本のミスをやってもよい。但し、攻撃的でなければいけない。
狙うべきコースを指示するので、そこに集中して打つこと。
②サービスを相手リベロ以外に打つこと。リベロは守備の専門家である。そこにサービスを打って
も相手は崩れない。
③ブロックは、マークすべきスパイカーを全員が認識しておくこと。
④スパイクは、今日一番調子の良い仲間のスパイカーに一番多くセット(トス)すること。
⑤クイックスパイクは、ラリーの中で使うこと。クイックに2枚のブロック(ダブル・ブロック)が着いて
いるのがカンボジアバレーの特徴(いわゆるバンチ・ブロック・システム)なので、サーブレシーブ
からのクイックは行わないこと。ラリーが続いてブロックが1枚になった時点でクイックを使うこ
と。
試合後にバレーボール連盟の事務局長が私のところに何か困ったような表情でやってきた。
「Mr.渡邉、我々の審判員達に審判技術を指導して頂けませんか?」
確かに、この2ヵ月間で私も感じていたが、FIVB(国際バレーボール連盟)公式ルールと少しずれている判定基準も見受けられる。きょうも、リベロがフロントゾーン付近でオーバーハンドを用いてセットしたが、反則に取られていた。私の見たところ、リベロはバックゾーン内でジャンプして、フロントゾーン内(バックアタック・ラインを含む)に足は触れていなかったので反則ではなかった。
大会が始まっている状況で、私がしゃしゃり出てもいかがなものか、と考え、事務局長の申し入れはお断りした。8月末に日本でアジアバレーボール連盟主催のレフェリー(審判員)講習会が開催され、そこにカンボジアからも2名参加する。その人たちが中心になって、これから審判規則委員会を連盟内で創っていくお手伝いはします、とお答えした。
私の7年間にわたる日本バレーボール協会での審判規則委員会規則部員、日本ソフトバレーボール連盟での審判規則委員会委員長としての経験を生かして、この国の審判員も育てて行こう。
英文のルールブックも早急にクメール語(カンボジア語)に訳して、審判員全員に手渡す必要がある。ほとんどのカンボジア人審判員は英語が読めない。何事にも真面目に取り組むカンボジア人は、審判員活動が向いていると私は思っている。この国から国際審判員第1号が生まれる可能性は大である。そして、審判技術の向上とともに各チームの技能やプレー態度も向上して行ったことは、日本バレー界を始め他国のスポーツの歴史が示している。
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