この画像は、カンボジアがトリプル・ブロック(3枚ブロック)を形成したところです。男子バレーの場合は、相手のスパイクに対してダブル・ブロック(2枚ブロック)でも止められないケースが多くあります。
そこで、私は、相手の強打者に対しては、なるべくトリプル(3人)でブロックに跳ぶことを指導しています。利点は、相手スパイカーの強打コースの幅を押さえることができるということです。スパイカーは左右に打ちわけるコースが無くなると、ブロッカーの上方、つまりブロッカーの指を狙ってワンタッチさせながらのブロックアウトを狙ってきます。そのことでスパイカーのミスを誘うことができます。動いている人間が、動いてる人間の一部を狙ってボールを打つ、それも空中でそのような高度なことを行うのですからミスも多く生じます。
利点の第2としては、相手スパイカーに心理的にプレッシヤーを与えることができます。
不利な点としては、ブロッカーの数が多くなりますので、3人のコンビを合わせることが難しくなります。また、レシーバーの数も3人になりますので守備範囲が広くなります。レシーバーの条件として、ダイビング・レシーブ(フライイングやスライディングでのレシーブ)能力を持ち合わせていなければ、トリプルブロックは、レシーバーに不利になります。具体的には、ネット際へのフェイント(画像の場合はゾーン#4のフロント・レフト)やコート中央へのソフト・アタックに対応することが難しくなります。
トリプルブロックを実行する際のポイントは、まず、サイドのブロッカーの位置です。相手のライン・スパイク(日本語ではストレート打ち)を完全に塞げる位置(基準)で跳びます。その側にミドルブロッカーが跳び、最後に反対サイドのブロッカーが移動してきて跳びます。この時に、3人目のブロッカーは、やや遅れて跳ぶことで、相手スパイカーにクロス・コースが空いているかのように見せることができます。つまり、誘い込むわけです。
画像の場合、基準となるライトのブロッカーの跳んでいる位置が、やや内寄りなのが気になります。相手スパイカーは左利きなので、ライン打ちも可能です。それなのに、レシーバーが、初めからフェイント処理のために前方に移動しているのは、いただけません。フェイントはダイビングでレシーブできるように、コートやや後方でスパイカーを視野に入れて構えるのが良いでしょう。
更には、3人目のブロッカーの空中姿勢ができていません。両手が相手コート空間内に出ていません。これでは、手にボールが当たったとしても、ボールは相手コート外に跳ね返ったり、ネットとブロッカーの間に入って行って(日本語の専門用語で「吸い込み」)ボールは床に落下してしまいます。
下の画像は、アメリカ男子の見事なトリプルブロック(Triple Blocs)です。これでは、スパイカーは強打するところがなく、迷っているうちに、強打してしまって、コート真下にブロックされています。
トリプル・ブロックを行うことは、難しいものです。繰り返しの練習が必要です。また、相手スパイカーの能力を見極めて、3人目のブロッカーは敢えてブロックに参加せずに、フェイントに備えるか否かの判断力も求められます。
そして、更に難しいのが、ブロックに参加した後の次の攻撃への準備を速やかに行うことです。ブロック後からの攻撃やスパイクレシーブ後からの攻撃を、専門用語では「トランジッション・アタック;transition attack」と言います。日本では「切り替えし」と呼んでいます。特に難しいのが、ブロック後からの攻撃です。
具体的に何が難しいかと言いますと、ブロック後にネットから速やかに離れて、スパイクのための助走距離を保つことが難しいのです。なぜ難しいのか?人の日常の動作の中で、後方に素早く下がるということは、ほとんどありません。従って、慣れていない動作を素早く行うためには繰り返しの動作練習、ここではステップ練習が必要です。筋肉も、体の裏側の筋肉を使います。
チームとしてのブロック技術統計としては、下図の通りです。カンボジアは、第5位にランクされています。カンボジアの最大の課題であるブロック力の強化が少しは効果が出つつあると言えます。タイランドの1セット平均のブロックポイントが3.38本となっていますが、これはアセアン地域の国々のスパイク力が弱いこととの関係が伺われます。ブロック力が、チームの成績に大きく影響していることは、下図のブロック成績表において、そのまま最終成績と見事に一致していることが、そのことを証明しているともいえます。
Scoring Block
| ||||||||
Rank
|
Name
|
Kill
Blocks |
Faults
|
Rebounds
|
Total Attempts
|
Average Set
| ||
1
|
|
54
|
69
|
93
|
216
|
3.38
| ||
2
|
|
46
|
76
|
100
|
222
|
3.07
| ||
3
|
|
29
|
63
|
60
|
152
|
2.42
| ||
4
|
|
27
|
47
|
57
|
131
|
2.25
| ||
5
|
|
16
|
32
|
34
|
82
|
1.78
| ||
6
|
|
16
|
52
|
50
|
118
|
1.60
| ||
7
|
|
17
|
53
|
39
|
109
|
1.55
| ||
8
|
|
9
|
34
|
46
|
89
|
| ||
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